この4年間で、和の生活はあわただしく変化した。
春佳が事故にあった時はまだ17歳だった和が、18歳になったころに"外套の中"が賞をとり、そのまま文壇デビューを果たした。
小説家という職業に理解のなかった親はいい顔はせず、高校を卒業と当時に家をでて、それ以来会っていない。
大学には通わず、デビューして有名になった名前が使いものになるうちにと、そのままいくつか短編を書き、半年後に連載、単行本と順調に作家らしい生活を築いた。
最初の1年は、1週間と空けずに春佳の家を訪れていた。
通夜も葬式も手伝い、百恵と一緒に涙を流した。
あの頃の思いを、今も忘れていない。
春佳との思い出を反芻して、こんなときはどうするかと記憶の中の春佳に尋ねて、そして一緒に笑う。
それが日常になり、そうやって日々を積み重ねて、いつの間にか20歳を超えて。
このままいられると思っていた。
このまま、ただ好きで、時折どうしようもなく寂しくなって、あの部屋に会いに行く。
そういう日々が、一生続くんだと思っていた。

