4/28 -サクラソウ- 花のような君に贈る想い

意識なんかしなくても和の生活にはいつも春佳がいる。
ああ、今ここにいたらこんなことを言うとか、これはきっと笑ってくれるとか、逆に怒られそうだからやめようとか。

和の行動のひとつひとつに、春佳は存在する。

それは、和が生きていく上で、もう切り離せない一部だ。

「これから先も、か」
「一世一代の恋ってやつですよ」
「まだ、若いんだから、分からないだろ」
「年齢なんか、関係ないですよ」


出会ってしまえば、年齢なんか関係はない。

「恋人じゃなかったのにか」

例えばまだ高校生だった自分を、好きな人が受け入れてくれなかったとしても。

それは年齢のせいではなくて、年齢を超えるほどの魅力がなかった自分がいけなかったのだ。だから、春佳は和には愛の言葉ひとつ告げなかった。

それでも、春佳を想う気持ちはひとつだって消えていない。


それはゆるぎないはずなのに。


「…そりゃあ、いつかは振り向かせてやろうと思ってましたけど」

呟いて、はっとして口を噤んだ。

"思っていた"なんて。まるで今はもう、そうは思っていないような言い方に、自分で気がついて傷ついてしまう。


顔をあげれば、宮前が和を見ている。

哀れで、可哀相なものを見る優しい目。


「…失礼します」


気がつけば、和は店を飛び出していた。