「別にそれ自体がダメってことではないし、そこに何かを言うつもりはない。けど、俺はそれを手伝えない」
宮前が沈んだ顔で俯く。
「なんで、宮前さんがそんなに落ち込むんですか」
「いや、こういう話だと思っていなかったから…結構な対応をしたと思って」
あまりに真剣に言うので、思わずくすくすと笑ってしまう。
「あまり深く考えないでください。別に、なにかあった訳じゃなくて、今ならできそうだと思って、思い立って動いただけなんです」
今までも考えてはいたが、何も浮かんでこなかった。
ぐちゃぐちゃにしたクロッキー超は、部屋にいくつもある。
それが、宮前の存在を思い出して加速していた。それだけに、この状況は残念だが仕方がない。
「それに、嫌がっている人に無理やり頼んだりしたら、それこそハルカ君に怒られちゃうので」
他の人の原作に絵をつける仕事のとき、春佳は苦手な原作だと田上につっかえてしまうこともあった。
もちろん、仕事だから割り切ることはあったけれど、そういう時の絵はどこか身が入っていないのが和には分かった。
そういうことを、宮前に強いたくはない。
「…そういう言い方をするから、きづかなった」
「はい?」
「まるで、花野さんがまだ生きているみたいに話すんだな」
宮前の少し切ないような顔は、見覚えがある。
同情。
可哀相で、腫れ物を扱うような痛ましい視線に、和は思わず笑ってしまう。
ふふふ、と笑った和に、宮前が怪訝そうに首を傾げる。
「ごめんなさい。ハルカ君は、私にとって一生の大切な人ですから。今、すぐそばにいなくたって、これから先も好きなことに変わりはないんです。だからですかね、たまにそういう風に言われちゃうんですけど」

