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1週間ほぼ納品という怒涛のラッシュが終わって、休憩がてらコーヒーを買いに出たらキーボードの上に追い討ちのようなメモが置かれていた。

「岡谷さん、これ」
「本当でーす。さっき連絡あったんで、よろしくお願いします」

丸眼鏡のお洒落な彼女は、ぐったりとしている宮前に容赦ない言葉を投げて再びディスプレイにかじりついた。

このチームが忙しいのはいつものことだが、今回は特におかしい。

でも、出された修正は直さなければ終わらない。


メールで送られてきていた修正を終わらせてOKが出たのは結局夜の9時を過ぎていて、事務所は宮前しか残っていなかった。

「…あー、もう無理だな」

最後にもう1杯コーヒーを飲もうと、給湯室に行こうと廊下に出ると、エレベーターを降りてくる石川とかち合った。

「お疲れ。まだいたのか」
「お疲れ様です。戻ってきたんですか」
「うん。あ、コーヒーついでに俺も欲しい」

石川の分も一緒に、休憩の時に買いに行った新しいコーヒーをドリップする。
給湯室の狭い空間に充満する香りで、荒んだ気持ちが少し安らぐ。

「悪いな」

郵便物を確認していた石川にコーヒーを渡し、自分のデスクに戻ると、おきっぱなしだった携帯電話にメール受信の通知が来ている。

(まさか、また修正じゃねえだろうな)

恐る恐る開くと、送信元に思わずため息が出た。

安堵でも落胆でもない。
胸を動かす高揚感を感じた自分に、嫌気がさした。