よく晴れた春空の下を田上と石川は2人で歩く。
ほのかにひんやりとした風と立ち止まると少し暑いくらいの日差しが残る心地よい春の日は、どことなくあの男を思わせる。
石川がぼんやりとそんなことを言いながら空を見上げた。
「本当は雨男だって言ってたけど。確かに、あいつが珍しく出版社に来ると雨だの雪だの降ってきててな。どっちかっていうと、これは和の恩恵だな」
雨男だと言っていたはずの男が、少女を伴って来た日はよく晴れた暑い夏の日だった。
その日は、その一週間で唯一、夕立にも降られないカラリとした日だったことも覚えている。
「よかったな、花野。和のおかげで、今年も晴れたぞ」
砂利道で立ち止まり、目的の墓石の前で田上が呟くと石川が少しせつない笑みを浮かべた。
あの、春のような男がいなくなってもう4年も経つのかと思うと、澄んだ空がやけに切なく感じられた。
「…ここでお前に会えるのも、これで最後みたいだな」
「寂しくなりますね」
「まあ、墓の下で大人しくしているイメージもないがな」
赤だの緑だの、明るい色の服をきて全開な顔で笑う男だった。
中でも山吹色のパーカーはトレードマークみたいによく来ていて、隣の和が白とか黒ばかり着るものだからより一層際立っていた。
「…和ちゃん、大丈夫ですかね」
「どうしようもねえだろ」
田上の顔がどこか沈んでいるのを、石川はやるせない気持ちで見ていた。
ほのかにひんやりとした風と立ち止まると少し暑いくらいの日差しが残る心地よい春の日は、どことなくあの男を思わせる。
石川がぼんやりとそんなことを言いながら空を見上げた。
「本当は雨男だって言ってたけど。確かに、あいつが珍しく出版社に来ると雨だの雪だの降ってきててな。どっちかっていうと、これは和の恩恵だな」
雨男だと言っていたはずの男が、少女を伴って来た日はよく晴れた暑い夏の日だった。
その日は、その一週間で唯一、夕立にも降られないカラリとした日だったことも覚えている。
「よかったな、花野。和のおかげで、今年も晴れたぞ」
砂利道で立ち止まり、目的の墓石の前で田上が呟くと石川が少しせつない笑みを浮かべた。
あの、春のような男がいなくなってもう4年も経つのかと思うと、澄んだ空がやけに切なく感じられた。
「…ここでお前に会えるのも、これで最後みたいだな」
「寂しくなりますね」
「まあ、墓の下で大人しくしているイメージもないがな」
赤だの緑だの、明るい色の服をきて全開な顔で笑う男だった。
中でも山吹色のパーカーはトレードマークみたいによく来ていて、隣の和が白とか黒ばかり着るものだからより一層際立っていた。
「…和ちゃん、大丈夫ですかね」
「どうしようもねえだろ」
田上の顔がどこか沈んでいるのを、石川はやるせない気持ちで見ていた。

