「まあ、深夜テンションというところですよ。私も眠くて判断力鈍ってましたし…って、もう日付かわってるんですね」
時計を見て和は愕然とする。もう睡眠時間が2時間も残っていない。
和がどうしようかと考えていると、宮前が壁に掛かっているボードを眺めていた。
「懐かしいですか?」
「…本当に飾ってあるとは思ってなかった」
ふとそこで、和は違和感に気がついた。
「宮前さん?」
「なんだよ」
「ああ、そういうことか」
(敬語じゃないのか)
和が1人で納得すると、宮前が眉を潜めた。
「気にしないでください。それより、せっかくなんでこれ見てもらえますか?」
部屋の壁際に、備え付けのクローゼットとは別に大きなワードロープがある。その扉を開くと、中には服ではなく大量の本が詰まっていた。
中は比較的綺麗で、和は迷うことなく2冊の本を取り出した。
「このあたり、装丁の感じとか、大きさとか理想なんです。今は材質や形が割りと好きにできるんですけど、シンプルかつ、雰囲気のいいものをと思っていてですね」
「おい、なにここぞとばかりに話を進めてるんだ」
「理想をお話してるだけですよ。ほら、触ってみてください、こういう触覚で訴えるのは児童書ならではで面白いんですよね」
ため息をつきながらも、和が押し付けた絵本を手にとって指を滑らせる。
「あー、こういう特殊加工使いたいのか」
「中身は普通のコートでもいいんですけど、表紙と中表紙くらいは箔押しかエンボスくらいはやりたいかな、と」
「フォントにもよるけどなあ…」

