短くなったブラックのクーピーが、小さく柔らかい音をたてて机の上に転がった。

転がした、というよりは、落としたという方が正しい。

その当人は、今まで書いていた柔らかくて優しいひらがなとは裏腹に、隈のひどい険しい顔で膝を抱えた。


イームズのリプロダクト品である白いチェアに固定させた柔らかいクッションも、長時間座り続けた所為でその恩恵はすっかり麻痺している。

後ろからみるとまるで卵の殻にまるまっている様にも見える。


「あああぁあぁぁああぁぁ・・・・・」


抱えた膝をジタジタとバタつかせて、まるまった肩が動いて、細すぎる腕が机の上に置かれた画用紙をぐしゃりと握る。


「むり、ムリ、無理っ!」


バンバンと画用紙を握り締めたまま机を叩くその姿は、傍からみるとあまりにも奇妙で、異質だった。


彼女の細すぎる体はくたびれたグレーのワンピースにつつまれ、シュシュで乱雑にまとめられた髪はもう後れ毛というよりハーフアップといったほうがよさそうな程に崩れている。

白と赤を基調としたその部屋に似合わないくたびれた住人は、ひとしきり暴れた後に、その汚い姿(なり)のままベッド代わりのソファに寝転がる。