「絶対いやだって言ってたのに、黒のノワールを作ってくれたりして」
「あー、いたなぁ。物知りノワールな」
田上がしみじみと、呟く。
「もう4年も経つんだなぁ」
カシスオレンジの、わずかな苦い酸味が口の中に残る。
「田上さん、」
「まだ4年じゃないですか。何を年寄りみたいに」
石川の焦った声に、和が乾いた笑いを重ねた。
「たった、4年です」
「もう、だろ。お前が大学入って、卒業する位の時間があったってことだからな」
「私大学行ってませんよ」
「分かりやすい例えだよ」
(あぁ、嫌だな。これだから、酔っ払いはいやだ)
和の顔から笑顔が消える。
すっと真顔になると、急に憂いのある大人びた顔になる。
「花野だって、別にお前に操立ててほしいとは思ってねぇと思うがな。宮前、いいじゃねぇか、ファンなんだろ?」
いつまでも、花野を想ってる訳にもいかないんだから。
こう言われるのは、もう慣れている。
春佳の話をする和に、知り合いはみんな口々にそう言ってきた。
「和はまだ若いんだからな、周りにいい男が現れたら、見逃すなよ」
田上の目が、切なげに細まる。
わかっている。
誰も、意地悪でそんなことを言っているのではない。
心から、優しい善意を和に向けている。
わかっているから、和は、この話が嫌いだ。
「あー、いたなぁ。物知りノワールな」
田上がしみじみと、呟く。
「もう4年も経つんだなぁ」
カシスオレンジの、わずかな苦い酸味が口の中に残る。
「田上さん、」
「まだ4年じゃないですか。何を年寄りみたいに」
石川の焦った声に、和が乾いた笑いを重ねた。
「たった、4年です」
「もう、だろ。お前が大学入って、卒業する位の時間があったってことだからな」
「私大学行ってませんよ」
「分かりやすい例えだよ」
(あぁ、嫌だな。これだから、酔っ払いはいやだ)
和の顔から笑顔が消える。
すっと真顔になると、急に憂いのある大人びた顔になる。
「花野だって、別にお前に操立ててほしいとは思ってねぇと思うがな。宮前、いいじゃねぇか、ファンなんだろ?」
いつまでも、花野を想ってる訳にもいかないんだから。
こう言われるのは、もう慣れている。
春佳の話をする和に、知り合いはみんな口々にそう言ってきた。
「和はまだ若いんだからな、周りにいい男が現れたら、見逃すなよ」
田上の目が、切なげに細まる。
わかっている。
誰も、意地悪でそんなことを言っているのではない。
心から、優しい善意を和に向けている。
わかっているから、和は、この話が嫌いだ。

