4/28 -サクラソウ- 花のような君に贈る想い


「宮前さんが学生の時に書いた絵のファンで、なにか描いてくれないかってお願いです」

これは、石川に協力を頼むために考えていた言い訳だ。

「宮前の学生時代の絵?」
「はい。3年生の時の展示のやつで。小学生の時にたまたま見て、祖父にねだってポストカードまで買ってもらいました」
「へえ、あるんだね、そんなこと」

宮前を見つけたのは、本当に偶然だ。

石川のことを紹介されて、事務所名をみて思わず二度見するくらいには驚いた。


「宮前はああ見えて優しいから、断ったのはよっぽどの理由があったんだよ」
「…そうですね」

田上が勝手に頼んだカシスオレンジの追加がきて、もう一度時計をみると今から帰っても10時には寝られない。

目に見えてげんなりしていると、石川が苦笑いをする。

「和ちゃん、その生活でよく平気だよね」
「10時から2時なんざ、一番盛り上がる時間じゃねえか」
「田上さん、それ、セクハラですからね」

いつものことだが、田上はオブラートという言葉を知らない。

「俺がその年のころなんか、昼夜問わずだったけどな」
「そんな人が児童書の伝説の編集者だなんて…」

げんなりして呟くと、石川が楽しそうに笑う。