家の前の道に車を停めた宮前に、和は深呼吸をしてから意を決して口を開いた。
「宮前さん」
「なんですか」
「実は、見ていただきたいものがあるのですが」
バッグの中から取り出したのは、小さいクロッキー帳だ。
スケッチブックより紙が薄くてページ数も多い、美大生やデザイナーには欠かせないあれだ。
「これなんですが」
渡されたクロッキー帳を、怪訝に思いながら開き、宮前は思わず目を瞠った。
一度ちらっと和を確認してから、他のページもパラパラとめくる。
パラ。ペラ。パラ。
パタン。
閉じたクロッキー帳を丁寧に両手で和に返してから、しばらくの沈黙。
………。
「ぐっ…はっ……ぐ、くくくっ」
ハンドルに突っ伏して、堪えきれないというように笑いだした。
その反応を予想していた和は、ひとまず宮前が笑い終えるのを待った。
待つこと、3分。
「結構笑い上戸ですね、宮前さん」
「…あー、腹いてえ」
お腹を抑えながら深呼吸をして、ようやく息のととのった宮前はぐったりと運転席にもたれ掛った。
「とりあえず、自分で絵が描けないというのは十分に分かりました」
「ご理解いただけて恐縮です」
和が頭を下げると、「くっ…」と笑い声が漏れた。
もう好きなだけ笑ってくれと思いながら、和は本題に入るべく前を見据える。
「絵本を、作りたいんです」
「…はい?」
「大切な人と、約束したんです。いつか、絵本を作るって」
懐かしい、紫陽花の季節の約束。
「宮前さん」
「なんですか」
「実は、見ていただきたいものがあるのですが」
バッグの中から取り出したのは、小さいクロッキー帳だ。
スケッチブックより紙が薄くてページ数も多い、美大生やデザイナーには欠かせないあれだ。
「これなんですが」
渡されたクロッキー帳を、怪訝に思いながら開き、宮前は思わず目を瞠った。
一度ちらっと和を確認してから、他のページもパラパラとめくる。
パラ。ペラ。パラ。
パタン。
閉じたクロッキー帳を丁寧に両手で和に返してから、しばらくの沈黙。
………。
「ぐっ…はっ……ぐ、くくくっ」
ハンドルに突っ伏して、堪えきれないというように笑いだした。
その反応を予想していた和は、ひとまず宮前が笑い終えるのを待った。
待つこと、3分。
「結構笑い上戸ですね、宮前さん」
「…あー、腹いてえ」
お腹を抑えながら深呼吸をして、ようやく息のととのった宮前はぐったりと運転席にもたれ掛った。
「とりあえず、自分で絵が描けないというのは十分に分かりました」
「ご理解いただけて恐縮です」
和が頭を下げると、「くっ…」と笑い声が漏れた。
もう好きなだけ笑ってくれと思いながら、和は本題に入るべく前を見据える。
「絵本を、作りたいんです」
「…はい?」
「大切な人と、約束したんです。いつか、絵本を作るって」
懐かしい、紫陽花の季節の約束。

