4/28 -サクラソウ- 花のような君に贈る想い

宮前の車は、コーヒーの香りが充満していた。

「酔いそうなら別の車借りて来ますが」
「いえ。コーヒー好きなので大丈夫です」

社交辞令に聞こえるが、それは本当のことだ。

「宮前さん、来月末でいくつか仕事が切れるって聞いたんですが」
「…一度聞いてみたかったんですが、石川とはどういう」

なんだか歯切れの悪い聞き方に、色々勘繰っている様子が窺える。

「3年ほど前にお会いしました。今一緒に仕事をしている田上さんが共通の知り合いで、私が前々から石川さんのファンだと言ったら紹介してくれたんです。

そこからは田上さんと3人で食事をしたりすることもありましたけど、2人で合ったりはほとんどないですね」

へえ、という意外そうな声が運転席から漏れる。

「それで、再来月くらいからなら少し時間に余裕ができるというお話なんですが」

話を戻すと、仏頂面な顔がさらに眉間に皺を寄せる。


愛想笑いをするイメージが宮前にはない。
仏頂面で、画面を睨むように仕事をしている。

でも、話すと怖い印象はなく、むしろ人の話を聞きすぎるくらいだ。

「大きなプロジェクトがひと段落するのは本当ですが、仕事がない訳ではありません。むしろ、今が詰めすぎで、普通に戻るだけです」
「…やっぱりプライベートで付き合っていただくしかないということですか」
「そもそも、事務所を通せない以上勤務時間中には対応できないですから」

ごもっともで。