4/28 -サクラソウ- 花のような君に贈る想い

そう。今、和はこの宮前久弥というデザイナーに個人的な依頼をしている。

「でも、どうしても宮前さんのイラストが欲しいんです」
「仕事の話なら石川でもいいのでは。知り合いなんでしょう?」
「石川さんではだめなんです」

石川は様々なテイストを手がけられるデザイナーで、彼がてがけた装丁の本や小物は和もいくつも持っている。

しかし、今回欲しいのは宮前のイラストだ。


「無理です」

しかし、宮前は一向になびく気配がない。

「どうしてもですか」
「どうしてもです」

最初の頃はメールにも返信があったのだが、最近では返事がなくなってきている。

事務所に電話はさすがに社会人として迷惑がかかるのでできない。


そこで、最終手段として石川を頼ったのだが。


「これ以上は仕事に差し支えますので、これで」

そう言って宮前が立ち上がろうとしたところで、部屋に石川が入ってきた。

「宮前ー、岩瀬さんのところの色校できたっていうから、取ってくるついでに本崎先生送っていってあげて」
「は?」
「方向一緒だから。本崎先生、執筆、よろしくお願いしますね」
「ありがとうございます」

石川の援護射撃は完璧で、ここまでが約束の内容だ。

にこっと宮前に向かって和が笑うと、深い深いため息をつかれた。