先輩が私からお礼をもらったと言う。
それに対して私が首を傾げると、先輩が私に手を見せて、裏返して……
私に近づけてきた。
そして私の顔真ん前、その手が鼻の頭に触れわかった。
唇も、先輩の手の甲に……
それがわかった時、指と指の隙間越しに見える先輩の顔。
カアッ… と顔全体に熱を帯びた。
「 先輩… 」
「 甲にキス、もらったから。奥森 純ちゃんの 」
パァと少し照れた顔で笑う先輩。
私はさらに顔を熱くした。
さらには鼻に詰まるティッシュ姿に恥ずかしさでどうかなりそうだった。
そこへ、胡桃がパタパタと走ってきた。
「 純! 鼻血どう? 小野寺先輩、いてくれてありがとうございます 」
「 胡桃、大丈夫 」
「 じゃあ俺は行くよ 」
「 はい 」
胡桃が囁くように、いいの?と聞いてきた。
私はそれに答えず先輩が保健室から出るのを見ていた。
胡桃は何かを残念がるようにため息つく。
「 優しい人だったね、先輩 」
「 だから聞いたでしょ、いいの?って 」
「 何が?」
小野寺 凌先輩かぁ
2年の……
あの手、大きかった。
私の顔に広がって……
自分の手を顔の前に広げて見ている私を胡桃は覗き込み大丈夫かと聞いてくる。
鼻血が止まり、二人で教室へ向かう。
「 小野寺先輩、カッコいいよね~ けっこう人気あるから狙ってる子いるみたいだよ、私は先生だけど 」
胡桃は先生の事を口にするだけですごく可愛くなる。
時折、それが羨ましくも感じる。
だから私も恋がしたいと尚更思う。