それからトクトクと心音が早くなる。
「 先輩… 」
「 教えて、サッカー部の西原と付き合ってるの?」
「 西原… 夕騎先輩ですか? 違いますよ、あの時のボール蹴ったのが夕騎先輩だっただけで、帰りに送ってくれただけで… 」
付き合ってるなんて、誤解されてた?
「 違うの?」
「 違います 」
違うとハッキリと答えて、小野寺先輩が私に見せた微笑み、そして……
「 良かった 」
この一言に、私の中にある小さな鼓動が何かを知らせている。
小野寺先輩……
良かった、その言葉の意味は何ですか?
私のこの鼓動は何?
「 純ちゃんの髪、綺麗だよな 」
不意に小野寺先輩の手が髪に触れて、ドキドキして……一気に真っ赤になった。
先輩が、私の髪に触ってる……
髪の束が胸元に落ちるのが見えながらも、赤い頬を隠したくてたまらず俯いた。
「 奥森さん? いた、まだあるから来て 」
江嶋君の声にハッとした。
俯いたまま小野寺先輩から一歩、二歩と後退して私にだけ聞こえた…
「 純 」
その声に反応して赤いままの顔を上げた。
小野寺先輩の顔が、私に優しく笑って見せる。
「 またね 」
ドクンッ…
大きな鼓動が、私に教えた。
何、なんでこんなにドキドキするの?
先輩にだけドキドキしてる。
私… もしかして……
小野寺先輩が、好き?
初めての感情に戸惑いながら気づいた気持ちをそのままに、私は江嶋君の元へ行き本を数冊手に持った。
不意に後ろへと振り返ると、棚に凭れ小野寺先輩が私をみていた。
どうしよう、私……
小野寺先輩にドキドキしてる。
_完_