春日野高校1年3組、奥森 純。

この日、私は初めてキスをした。

こんな経験、二度と出来ない……

それほど私の中では特別な出来事だった。

まるで…

無数の虹色したシャボン玉が弾けるみたいに。




「 純、おはよう!」

「 胡桃、おはよう。あれ、今日はリボンのピンだね、可愛い 」

「 ありがと~ 純には負けませーん 」

「 何それ… お世辞をありがとね 」




中学時代のお下げ髪は卒業、高校では髪は結ばないと決めていた。

そして、私はいつか素敵な恋がしたいと思っている。




――教室。



「 奥森さん、谷村先生から伝言、グランド横の花壇にいるから来いって言ってたよ 」

「 あ~ うん、わかった 」

「 純、待って私も一緒に行く!」



友達の山口 胡桃(クルミ)。

胡桃は中学からの仲良しで、高校も一緒に行けたらいいねと受けて今も一緒にいる。

胡桃は担任の谷村 宗司先生に恋してる。

教室に入って初めの一言の後に見せる少しの笑みがたまらないと胡桃は言う。

私は恋とはまだ縁がない。

そんな私に予期せぬ事態が起こったのは、先生に呼ばれてグランドに出た時の事。

胡桃が先生に会えるとウキウキしながら歩いていると、胡桃が先に先生を見つけて駆け出した。

それを見ながらクスッと笑っていて突然、叫ぶような声が聞こえた。




「 危ないっ!!」

「 よけろー!!」



声に顔を向けると、視界が何かに遮られた。

一瞬目をグッと閉じてしまった私が次に目を開くとそこにあったのは、手……


誰かの手が私の顔に当たるの助け、そこから落ちるボール。

視界に広がる手……

この時、この大きな手のひらの甲が触れていた。


私の唇に……


甲が、触れていたのです。