「は?なに?」

「働いてる」

「はぁ?マジで言ってんの?お前が?」


必然的に口から離れて行ったタバコ。

空に向かって煙を吐くと、寛貴は何故かタバコの煙と一緒にため息を吐き捨てた。


「兄貴がよ、結婚したから出てけっつーから」

「え?お前の兄貴結婚したのかよ」

「あぁ」

「いつ」

「えー…もう二か月くらい経つ。てかお前の姉貴知ってんだろーが」

「俺、アイツと話さねーからな」


3つ上の寛貴の兄貴と俺の姉貴は同じ高校に行っていた同級生で仲が良かったらしい。

最近では全く寛貴の兄貴にも出会う事もなければ、そんな話し姉貴から聞く事もなかった。


「でな。家賃払わなきゃいけねーだろ?だから仕方なく」

「マジかよ。で、何してんの?」

「知り合いの人に紹介してもらって現場仕事」

「へー…」

「透哉も、退学になったら紹介してやるわ」

「はぁ?てかお前と一緒は遠慮するわ」

「あ?どー言う意味だっつーの!」


不貞腐れた寛貴の眉がグッと寄る。

クスクス笑う俺に、「おい透哉」なんて新たな声に視線が向いた。