「この部屋使って」
宛がわれた部屋は八畳ほどの広さがあった。
すでにシンプルなベッドとデスクが置いてあり、備え付けのクローゼットが見える。
美桜が借りていたアパートの部屋よりもよっぽど小奇麗で広い。
この程度の部屋を遣わずに持て余していたとは。
「この部屋、丸々使わずにいたんですか?」
「ああ、まあゲストルームみたいなもんだったから」
好きに使っていいよと言われ、美桜はとりあえずその部屋に荷物を置いた。
この部屋が今日から自分の部屋になる。
部屋中を見回して、急に現実感が沸いて来た。
「美桜、ちょっと来て」
「は、はい」
リビングの方から呼ばれ、慌てて立ち上がる。
司はコーヒーを淹れているところだった。
「あ、私がやりますよ」
「別にいいよ」
「これから一緒に住むんですから、そのくらいさせてください」
「あー」
「それに食器や物の置き場も覚えておきたいし」
「美桜は料理は得意なの?」
「得意ってほどではないですけど、自炊はしてましたからある程度はできます」
「じゃあ、これからは美桜の手料理が食べられるわけだ」
司はどこか楽し気に言った。
手料理、と言われると一気に緊張してしまうのはなぜだろう。
「期待に添えられるかはわかりませんけど…住まわせて貰う訳ですし出来るだけ家事はお手伝いさせてください」
美桜がキッチンに入ると、司はふっと小さな笑みをこぼした。
「何か同棲始めるカップルみたいな会話だね」

