「ムーシュカっていう名前なんですね…」


 一応ペットとして紹介されたのだから、名前を憶えておこうと思った。


 こだわりが強い司のことだ。

 ルンバ、と呼んだら怒られてしまいそうな気がしたからだ。



「ああ、二台目だから」


「…あ、もしかして一台目は『ライカ』ですか?」


「……」

 司が振り返る。

 レンズ越しにじっと見つめられ、どきりとした。


 起き抜けの気だるさに、奇妙な色気を連れている。



「…当たり。よくわかったね」


 それは宇宙に行ったロシアの犬の名前だと記憶していた。

 ムーシュカは二匹目だったはず。



「この情報知ってるとか…ほんと変わってるな…」


 司さんに言われたくないです、と返す、これも何度目だろうと美桜は思った。