「何……」


 その背中が消えていくのを確認すると、美桜はその場に座り込んだ。


 そっと自分の唇に触れる。

 まだ感触が残るようで、胸が騒ぎ出す。


 勝手にキスしておいて、あっという間に消えていった。


 強い夜風がホームを駆け抜ける。

 嵐が去っていったような感覚。


 失恋をして落ちていた心は、強烈なキスで一瞬にして奪われていた──。