「でも……」
言っていることが、全く理解できないわけではない。
実際に司のクリエイティビティに触れて、その勢いやテンションがいかに重要かということはわかっている。
そして司の恐ろしいまでの合理主義な部分も、何となく理解し始めていた。
要するにいちいち連絡する手間さえ省きたいし、リズムを崩さずに創作に没頭したいのだろう。
とはいえ、これは強引過ぎる案だと、美桜は首を振る。
「一緒に暮らしたとしても、私なにも出来ることは…」
むしろそばにいて邪魔をするだけでは、と危惧する。
司のあの集中力を目の当たりにして、侵してはいけない領域とすら感じていた。
「あるよ」
司は、ふっと一瞬だけ柔らかに笑った。
「オーバーワークを止めたり、毛布持って来たり、あとは…疲れた俺の背中をさすったり?」
「あ…」
あれだけ疲弊していたのに、司は昨夜のことを覚えていた。
彼なりに礼を言っているつもりだろうか。
なぜだかそれが美桜をほっとさせる。
「そういう人がいないと、俺やりすぎるとこがあるらしいから」
そうでしたね、と美桜は薄く頷く。

