パソコンが立ち上がる間のブランクな画面を見つめ、昨日のことを反芻する。




「一緒に住む」


 そう言って来た司が脳裏によぎる。


 あの時、司は相当疲れていて、美桜の返事も待たず、すぐに眠りに落ちてしまった。


 だからその言葉は冗談なのだと解釈し、美桜はそのまま司のマンションを去った。




 そう、あれは寝言のようなものだったのだろう。

 でなければ、よく知りもしない女性の新人と、一緒に住むだなんて言うはずがない。



 きっとまた例の、小悪魔の戯言だ。



 パソコンが立ち上がるのを確認し、仕事に集中しようとキーボードに手を置いたときだった。



 デスクに置いていた美桜のスマホが光った。

 何気なくメッセージを開いてみると。


『ちょっと来て』

 司からだった。

「……」


 スマホを開いたまま、司のオフィスに目を向ける。


 ブラインドは下りたままだった。