作業音だけ鳴り響く部屋の中で、同じ世界を作り出している。 その空気がなぜだか心地よい。 「なんか…初めてだな」 「はい?」 「紘平さん以外で、仕事中で、そばにいても気にならない相手」 パソコンから目を離さずぼそっと呟いた司を、美桜は驚いて見つめた。 司は紘平といるときも、こんな感じなのかもしれない。 ひとつお題を与えれば、喜んでそこに挑む。 決して邪魔をせずに、傍らでその世界の誕生を信頼して待っている。 自分もそんな存在に近付けるだろうかと、美桜は憧れを含んだ眼差しで司を見つめた。