小悪魔カレシの甘い罰




「早出しのさくらんぼですか」

「早出し?」

「時期はもう少し先のはずですよね。粒も大きいし高そう」

「そうなの? クライアントさんが仕事のお礼にって送って来たやつだよ」


 言いながら司は、また一つ、さくらんぼを口に入れる。


 ありがたみがいまいち分かってないらしい。


「さくらんぼの時期がいつなのかとか考えたことないな、ていうか詳しいんだね?」

「地方出身ですから。地元の周りではハウスで色々フルーツ作っていたので」


 そういう環境でなければ、自分も野菜や果物の旬がいつなのかなんて考えもしなかっただろう。



 そこで美桜がはっとして声を上げた。


「そういう人向けに作りましょう!」

「は? そういう人向けって?」

「司さんみたいな人です」


 顔を輝かせて美桜は続ける。


 突然のテンションの高さに、司の方は少々面食らった顔になった。


「自然に興味がない、農作物や木々や花や…そういう、移ろいでいく自然に無関心な人向けです」

「なんか言い方が…」


 風情や情緒に無関心だとでも? と司は苦笑する。



「今の子供たちもそんな感じじゃないですか。例えばお寿司を見ても、海や川で泳いでいる姿を想像できない子もいるそうですよ」


 これは偶然見たドキュメンタリー番組で得た情報だった。


 親や先生がそうだと教えても、食べ物や生き物に興味がなければ何の意味ももたない。

 だからこそ、どんなふうに関心づけるかが教育のポイントだと。