小悪魔カレシの甘い罰




「俺たちのパートは『自然』」

「自然で、学び…ですか」

「漠然としてるんだよね」

 資料を眺めながらペンを持つ手をふらふらと動かした。



 もしかして、0からアイデアを出すのは好きではないのだろうか。


 司は、どちらかといえば伊崎の頭にあるものを完璧に具現化するタイプと聞いた。

 それは素晴らしいものだが、逆を言えばアイデアや興味が無ければ手は動かないことになる。



「何かある?」

「いきなりですね」

「自然に興味ないから困ってる」


 デジタルの世界に生きる司らしいと、美桜は苦笑した。



「自然に興味ないと言っても、生活と切り離せなくないですか」

「なんで?」

「例えば…毎日の天気が気になったり、季節の移り変わりを食べ物とかで感じたりとか」

「気にならない。感じない」


 ばっさりと言い放たれ、美桜は少々うなだれる。


 この人は本気でロボットなのかもしれない。

 そう思わないと、この情緒の欠落した物言いに、この先付き合いきれない気がした。



 少し沈黙が続くと、司は部屋に持ち込んでいたフルーツに手を伸ばした。


「食べる?」

「いえ…」


 本当に甘党なんだな…と苺やさくらんぼを摘まむ姿を見つめる。

 甘いものを頬張りどこか満足そうだ。


 見た目は燐とした青年だけれど、こういう無防備な姿にどこか母性をくすぐられた。