頭上から振って来た言葉と声は、寒気がするほど冷たい。


 はっとして見上げれば、美しい線を重ねた二重瞼と大きな瞳と目が合った。

 キメの細かい白い肌と、整った顔立ち。
 
 全体的に童顔なのに、冷淡な表情を浮かべた彼からは、不思議な色気と魅力を感じる。

 幼さと大人っぽさが同居して、なぜか惹きつけられる。
 
 一見、読者モデルか何かかと思った。


「あんたが飛び込むことで、どんだけの人の足を止めると思ってんの。…ていうか、俺の足止めになる。徹夜明け、速攻で帰りたいのに」

 驚くほど冷たい視線にぞくりとした。

 長いまつ毛が、綺麗な薄茶色の前髪に引っかかってしまいそうだ。


「あの…」

「とにかく、死ぬのは勝手だけどここではやめてくんない」


 現れた美青年にただ見とれるばかりで、言葉が継げない。

 言いたい放題になぶられ、茫然とするばかりだった。


「聞いてる?」
  
 彼は眉を寄せて問う。
 
 美桜ははっとして、彼と距離を取った。


「い、いきなり何なんですか、別に死のうとしてたわけじゃ…」

「じゃ何、何でそんなふらふらして地獄の淵歩いてんの」