「と…コレは再現性が低いかな」

 突然、ぽつりと司が言った。


 美桜も我に返り、手を止める。


「あれ……あんただけ?」


 椅子をくるりと反転させて、司が美桜を見た。

 気付けば、部屋には美桜と司だけになっていた。


「あ、はい」

 美桜も、他のものがいなくなっていることに今気付く。


「他はギブアップしたわけだ」

 司はヘッドフォンを外し首に掛けると、ふっと一息ついた。


 ロボットから人間に戻った彼は、デスクの引き出しから棒付きのキャンディーを取り出して口に頬張る。


 そして美桜に視線をやり「どう思う?」と軽く投げた。


「…すごいです」

 美桜はあふれ出す質問の波をぐっと堪え、シンプルに答えた。


「もちろんすべてを理解しているわけではないですけど」と付け加えて美桜は続ける。


「どうやったらこんなきれいなコード書けるんですか?」


「んー」

 わかんない、と答える司は、頬の中でキャンディーを動かしながら首を傾げている。


 単に説明するのが面倒なようだ。