「司さんの頭の中はどうなっているんだ」

「伊崎社長でも、ついていけないらしいよ」

 同期たちが小声で話し始めた。


 だからこそこの作業においては、司をリーダーに据えてやっているのだという。
 
 想像力は伊崎の方が上、でもそれを具現化できるのは司しかいない。


「ある意味、最強のタッグだよな」


 そのうち、コードの内容を理解するのは不可能だと、大半が諦めてそっと部屋を出て行った。


 そんな中、美桜だけが必死にメモを取っていた。

 今は理解できなくても、写して後からパソコンに起こそうと思ったからだ。

 そうすれば少し司に近付けるかもしれない。

 とにかく自分のためになると思った。

 そして、司のことを理解できるかもしれない。


 初日は関わりたくないと思っていたのに、これだけの才能を見せつけられ、その考えは吹き飛んでしまった。
 

 司がいるその世界に近付きたい、触れてみたい。
 
 司が生み出したばかりのものを目の当たりにし、美桜の心は高ぶっていた。
 


 元来、夢中になりやすい性格もあり、美桜は我を忘れて読み取れるだけのコードをタブレットに書き込んだ。


 わからないことばかりだけれど、このコードを読み解く幸せを感じていた。
 

 自分の知らない世界がここにはある。

 そのことが美桜を一層夢中にさせた。