「…あんた」

「はい?」

 当たりました? と美桜がにこにことしていると。

「本気で、馬鹿だな」

「な…っ」

 重なる毒舌に美桜は大きな声を出す。


 司よりはまだ仕事は出来ないだろうが、そう何度もバカバカ言われてしまうとショックでならない。
 
 美桜がダメージを受けているのを見ると、司は今度はくすっと吹き出した。
 

 表情がころころ変わる。
 
 それを美桜は思わず観察してしまう。
 
 なぜかずっと、司から目が離せない。
 
 予測できない言動と表情に、いつの間にか振り回されているような感覚。



「今年の新人は、面白そうだな」

 言うと彼は、軽やかにカフェを出ていった。
 
 そして外にいた伊崎を捕まえると、いつもの様子に戻って話をしていた。


 残された美桜はぽかんとして今起きたことを整理しようとしていた。
 

 カフェの中はざわざわとしている。
 
 司と美桜のやりとりが何であったか気になっているようだった。
 


 ほんとに、一体、何だったの?
 
 こっちが聞きたい、と美桜は司の背中を見つめながら思っていた。