あきれた。
 

 美桜はその傲慢な態度に眉を寄せる。
 

 仕事より女との逢瀬が優先?
 
 少しはスタッフの身になってあげたらいいのに。
 

 彼がどんなに優秀なプログラマーであっても、自分は彼を尊敬などしないだろう。
 
 そうはっきりと心に誓った。
 

 出ていく司が美桜を捉えた。
 
 立ち止まったまま見つめてくる司に、美桜はどきりとして動揺する。
 
 すると、彼は口角を引き上げ、口元だけで微笑した。


「な…」


 嘲るような瞳に、不覚にも頬が熱くなる。


 この前は「どこかで会ったか」なんて聞いて来たのに。

 まるでそそのかすように、その手で唇に触れて来たのに。

 そんなことはもう関係なく、他の女性の背中に手を回す。


 やっぱり理解できない。


「…何考えてんの?」

 思わずそんな言葉が口から零れる。


 すると周りにいたスタッフは、

「それ、答えのない問いだから」

「ここにいる全員、そう思ってるよ」

「あいつを理解しようなんて無駄なことだな」


 諭すように言ってスタッフは仕事に戻っていく。
 
 長年一緒に仕事をしてきた仲間でさえ理解できない彼の思考。
 


 理解したいとは思わない。
 

 けれど、どうしても気になる。
 
 
 部屋を出ていく司を見つめながら、なぜか心が揺れ動くのを感じていた。