「とはいえ、最初は個人で動いても、よくわからないこともあるだろうから、研修後に先輩と新人2人一組で、チームを作って動いてもらう」

「チーム?」

「その方が、新人も覚えることが多いし、お互いに刺激になるだろう」


 出来るだけ早く仕事を覚えたい美桜にとって、それは嬉しい提案だった。


「俺、相沢さんと組みたい」

「みんなそうじゃね? プログラマー志望者は、みんなあの人に憧れてるんだから」

「選ぶ権利は新人の俺らにはないから、祈るしかないな」

 新人たちは口々に言い、司に秋波を送っている。


 どうやら女子だけでなく、その技術能力の高さから、男性にもファンがたくさんいるらしい。



 その中で美桜だけは、複雑な表情を浮かべていた。

 司とだけは組みたくない。

 自分が司のチームになれる訳がないだろうが…万が一、くじ引きなんかで決定したとして。

 あのキスを思い出して、気まずくなったら、まず仕事に集中できなくなるだろう。


 第一、気が合うとは思えない。

 初対面から、それはわかりすぎている。

 
 あんなふうに、一瞬で自分の心をかき乱した人は、司が初めてだった。



 何気なく司に視線を投げると、再び目が合ってどきりとする。


 気のせいだろうか。

 さっきからずっと、司が自分を見ている気がする。

 やはり何か思い出したのだろうか。