どうしよう。
 
 あいつも同期だったなんて。
 

 なんて偶然。

 なんてツイてない。
 
 こんなふうに再会するなんて。
 

 美桜が気まずそうに、視線を落としていると、


「…本物の相沢司だ」
 
新入社員の1人が、興奮気味に呟いた。


「知ってる。有名なプログラマーだよな」
 
 男子たちは小声で盛り上がっている。


「伊崎社長もかなりイケメンだけど、相沢司さんもかなりの美形~」

「ほんと、そこらのアイドルに負けないよね」
 
 一方、新人の女子たちはちがう方向で、司を見つめていた。
 

 へぇ、有名人なんだ、と美桜が耳をそばだてる。



「それじゃ、社員から自己紹介してもらおうか」
 
 伊崎が隣にいた司に目配せした。


「あー俺、最後でいいです」
  
 何も考えてなかった、と司は拒否した。
 
 
 社長の振りをあっさりとかわす態度に、周りがどっと沸く。


 その様子に、この会社での司の立場や、自由度の高さが見えた。


「何言ってるんだ、実質ナンバー2が」
 
 気だるそうに言う司に、他の社員がはやし立てる。


 え、ナンバー2?


 美桜はその言葉に固まる。
 
 
その童顔な顔立ちと、自由奔放な言動から、勝手に同期だと思っていたが、


「じゃ…上司ってこと…?」
 
 よりによって、自分の上司になる人と、あんな言い合いをしていたなんて。
 

 そしてキスまで…。
 

 どうしよう、と美桜は俯き、司の視界から外れようとする。