心の中で満足していた、その刹那。 「もしかして、アンタ…………」 反射的に振り返ると、その男子生徒は、顔についた雪を払おうともせず、ただただ目を丸くしてこちらを見つめていた。 その顔を見た瞬間、私の記憶の奥深くが疼く。 あれ、私、この人のこと……どこかで……? 何か思い出そうとしていたそのとき、チャイムの音が響き渡った。 いかんいかん、早いとこ帰らなくては。 「サヨナラ」 もう会うこともないだろうその男子に向かって一声かけてから、今度は本当にその場を去ったのだった。