16の、ハネ。


そこでふと、昨日の家でのことを思い出した。

……今は健常者の大会には出ていないことについて。

なぜか、今聞いてみようと思ったのだ。

しかし、学校の中で聞けるような内容ではない。かと言って、今を逃したら、多分私は聞くタイミングを逃す。

思い立ったが吉日、とか言うし。


君のことを知れば、私は少しだけ前へ進めそうだから。
私の過去とも、向き合えそうだから。


「ねえ陽人」

こちらを振り向いた陽人は、「今度は何だよ」と言いながら笑った。

「陽人は、昔、健常者と同じ大会に出て全国とか行ってたでしょう?」

陽人の顔にほんの一瞬、影がかかった。
それでも私は続ける。

「そんなに実力があるのに、何で今はパラの方に専念してるの?」

「……俺のことググった?」

陽人が『ググる』なんて、現代言葉を使っているのに少しだけ違和感を覚えた。

「うん、調べた。グーグルじゃないけど」

すると、陽人は「やっぱそーなんだー」と言いながら俯いた。

もしかして、地雷踏んだ?

心配になって、謝ろうかどうか迷っていたら……。

「『ググる』ってグーグルから来てんのかー」

「………………は?」

なんか、こんなやり取りを陽人と初めて喋った日にもしたような。