そこでふと、昨日の家でのことを思い出した。
……今は健常者の大会には出ていないことについて。
なぜか、今聞いてみようと思ったのだ。
しかし、学校の中で聞けるような内容ではない。かと言って、今を逃したら、多分私は聞くタイミングを逃す。
思い立ったが吉日、とか言うし。
君のことを知れば、私は少しだけ前へ進めそうだから。
私の過去とも、向き合えそうだから。
「ねえ陽人」
こちらを振り向いた陽人は、「今度は何だよ」と言いながら笑った。
「陽人は、昔、健常者と同じ大会に出て全国とか行ってたでしょう?」
陽人の顔にほんの一瞬、影がかかった。
それでも私は続ける。
「そんなに実力があるのに、何で今はパラの方に専念してるの?」
「……俺のことググった?」
陽人が『ググる』なんて、現代言葉を使っているのに少しだけ違和感を覚えた。
「うん、調べた。グーグルじゃないけど」
すると、陽人は「やっぱそーなんだー」と言いながら俯いた。
もしかして、地雷踏んだ?
心配になって、謝ろうかどうか迷っていたら……。
「『ググる』ってグーグルから来てんのかー」
「………………は?」
なんか、こんなやり取りを陽人と初めて喋った日にもしたような。
