昔、よく返事をしなくて怒られたなぁ……。
だけど、私は意地になって逆に返事をしなくって。
そうすると、もっと怒られちゃって、最終的には泣きながら謝っていた。
ふふ。懐かしい。
まさか昔のことを、こんなにも穏やかな気持ちで思い出せるとは考えてもいなかった。
しかも、こんなありふれたやり取りで。
陽人には、きっと不思議なパワーがあるに違いない。
「陽人」
「んー?」
何か言おうとして、でも、何も良い言葉が思い浮かばなかった。
「……ううん、なんでもない。ただ、名前を呼んでみたかっただけ」
「ふーん。変なやつ」
……君ほどではないけどね。
