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「進路って、マジで、ナニモンなのっ!?」
「いやいや、ウチにキレられても困るんですけど」
私の心からの訴え (というか、もはや嘆き) に対して、佐藤ちゃんは塩対応で流してきた。
週明けの眠い眠い月曜日。
6時間目の進路ガイダンスを終えて。
先生が私たちに、一枚の紙を渡してきた。
『進路調査票』とかいうヤツを…………。
そこには、「第一志望の大学」とか「科目選択」とか「文理選択」なんていう、進路に関わる大事な項目がツラツラと書き重ねられている。
私は右手に持ったその紙を見ながら、ぐったりと机に伏せた。
「大体さ、中学んときも高校の進路決めたわけじゃん? 今始まった事でもないでしょ」
と佐藤ちゃんは呆れた顔でこちらを見つめていた。
「んんんー! そーなんだけど!」
私は上手く言葉に出来ず、そこで口を閉じてしまった。
確かに佐藤ちゃんの言ってることは間違ってない。
けど、それとこれとはワケが違う気がするっ……!!
中学のときはなんとなく進学校っぽい高校選んどけば、失敗するってことはなかったじゃん。
でも。
なんていうか、大学はさ、就職とかにもつながるわけでしょ?
科目や文系理系の選択だって、どれか一つの道に絞らなくてはならない。
でもそれって、後になってから「こっちにしておけば良かった」って思っても手遅れなわけじゃん。
そういうことも考慮すると、何が正しくて何が良いのかわからなくなってきちゃう……。
「確かに、大きな分かれ道だよね」
私の脳内を見透かしたかのように、佐藤ちゃんはドンピシャな言葉をかけた。
「けどさ、結局自分の人生なんだし、『やりたいようにやれ!』じゃない?」
「やりたいようにやれ……」
私のバカみたいなオウム返しに、佐藤ちゃんはフッと笑った。
「ウチは『なるようになれ』の人生は反対だよ。確かに自然のままに生きていくのは悪いことじゃないけど、でも幸せは自分で掴みに行かなきゃ」
今の時代、シンデレラストーリーなんて起きっこないしね。
そう言った佐藤ちゃんは、わざとらしくため息をついた。
「ま、アンタの王子様はきっと今頃、教室の外で待ってるけど」
その言葉だけで、誰が待っているのかわかった。
最近の佐藤ちゃんは、私と陽人の関係を茶化すことが楽しいらしい。
……私にとっては迷惑極まりない。
まぁ、嘘の噂を流したりはしてないから、それで私はいいんだけど。
しかし、このまま無視すると「何? 意識しちゃってんの?」的な展開になりかねない。
「あれの、どこが王子様だって言うの?」
仕方なく、呆れながら私は聞いた。
「ウチは天久ちゃんとお似合いだと思うけどなー、バカップルっぽくて」
「誰がバカップルだっ!」
私は佐藤ちゃんの頭に拳をコツンとぶつけた。
「やばい、今ので世界史の知識ぜーんぶ抜けた」とかぼやいている彼女を放っておき、私は陽人の元へ向かった。
