16の、ハネ。



「陽人が頑張ってるから、興味を持ったんだと思う」

私にしては珍しく、サラリと素直な気持ちが口に出た。
そこに恥ずかしさは一切なく。

「なら良かった」

そう言ってニカっと笑う陽人は嬉しそうだった。

夜の風は相変わらず冷たい。でも、冷たさの中にどことなく優しさも感じるのはなぜだろうか。


「それじゃ、また」

と私が声をかけると、陽人はいつも通り大きく手を振った。

「バイ」

やたらネイティヴな発音を残して、陽人は背を向けてその場を去っていった。





これまで陽人に、何度も打ち明けようかどうか迷っていたことがある。

それを打ち明けたら、陽人はなんて言うだろうか。

そして打ち明ければ、私は今よりもっと強くなれるだろうか。
変われるだろうか。


私は変わりたい。

でも同時に、今のまま何事もなく普通にしていたいと望む自分もどこかにいて。


機会はあった。
打ち明けられそうな場面も、相談できそうな状況も、何度もあった。

だけど、それでも未だ言い出せない。

いつか言えると信じて、明日があると信じて。

明日なんて誰にも保証されていないのに。






でも、その時は意外にもあっさりとやってくるんだ。