「陽人が頑張ってるから、興味を持ったんだと思う」
私にしては珍しく、サラリと素直な気持ちが口に出た。
そこに恥ずかしさは一切なく。
「なら良かった」
そう言ってニカっと笑う陽人は嬉しそうだった。
夜の風は相変わらず冷たい。でも、冷たさの中にどことなく優しさも感じるのはなぜだろうか。
「それじゃ、また」
と私が声をかけると、陽人はいつも通り大きく手を振った。
「バイ」
やたらネイティヴな発音を残して、陽人は背を向けてその場を去っていった。
*
これまで陽人に、何度も打ち明けようかどうか迷っていたことがある。
それを打ち明けたら、陽人はなんて言うだろうか。
そして打ち明ければ、私は今よりもっと強くなれるだろうか。
変われるだろうか。
私は変わりたい。
でも同時に、今のまま何事もなく普通にしていたいと望む自分もどこかにいて。
機会はあった。
打ち明けられそうな場面も、相談できそうな状況も、何度もあった。
だけど、それでも未だ言い出せない。
いつか言えると信じて、明日があると信じて。
明日なんて誰にも保証されていないのに。
でも、その時は意外にもあっさりとやってくるんだ。
