陽人の好きな子。
普段、彼が見せないような照れ笑いをさせる子。
なんか、わかっていたことだけど、改めて本人の反応を見るとショックが大きくて動揺してしまった。
しばらく呆然としていると、「音羽? どした?」と陽人が私の顔を覗き込んだ。
あ、やべ。
私は何か言わなきゃ、と焦っては口をパクパクさせた。
えっと、えっと……。
「あ、ううん。なるほどねぇーって思ってさ。通りで可愛くて元気いっぱいなわけだ! あはははは」
完全な作り笑い。
語尾の方の笑い声は明らかにわざとっぽくて、さすがの陽人でも怪しむのではないかと案じたが……。
「だろー?」
とにこやかに笑う陽人を見てホッとした。
……私の思い過ごしだったようだ。
「それにしても」
陽人が肉まんのゴミを、クシャクシャッとポケットに突っ込みながら切り出した。
「音羽がこんなにパラバドに興味持ってくれるとは思ってもなかった」
びっくりして陽人の方を振り向くと、「いや、なんでかなって思ってさ」と彼は爽やかに笑った。
「それは、その…………」
私は突然の問いかけとその笑顔に、思わず口ごもってしまう。
いや、本当は答えなんてもう心の中で出ている。
君のこと、君が夢中になるものの事をもっと知りたいと思ったから。
君みたいに、前向きに生きたいと思ったから。
君が楽しそうだから。
君が笑っているから。
