16の、ハネ。



「んで、俺みたいに膝がなくて義足を使ってたり片足か両足が麻痺してる人は、SL3っていう種目に出るわけ」

帰り道。陽人はパラバドについて語っていた。

今ではこれが私たちの日常となっている。
そのおかげで、私もパラバドについてちょっとだけ詳しくなった。
ついでにバドのショットのコツや技についても、それはそれは丁寧に教えてくれる。

「麻痺っつっても、軽度の場合はSL4っていう別の種目の方に出るんだ」

「その、麻痺の重い軽いってどういう基準で決めてるの?」

「うーん、俺も詳しいことはわかんねぇけど、専門の医者が見てくれるらしい」

「へぇー、細かいね」

なーんて、私は相槌を打ってるんだけど、頭の中はそれどころじゃなかった。

「あ、あのさ」

んー? とコンビニの肉まんを頬張りながらこちらを振り向いた陽人の無防備な顔に、一瞬だけ胸が高鳴ったが、慌てて平生を保つ。
声が裏返ったりしないか不安になりながら、私は陽人に問いを投げかけた。


「あの、左腕が義手でさ、ポニーテールしてる女の子。あの子ってどんな子なの?」


すると、陽人は「あー、奈津のことか」と頷いてから「奈津はな」と切り出した。


「パラバドミントン界のマドンナ的存在だ」

そう言った陽人はドヤ顏とはにかみ顏を混ぜたような表情をしていた。

この時の陽人の顔は、たぶん、一生忘れない。