16の、ハネ。




朝。学校に着いて、ぼーっとしていると。

「おはよー」

佐藤ちゃんが私の席まで来て挨拶してきた。してきた、って言うと嫌がってるように聞こえるかもしれないけど、別にそういうわけではない。

「おはよう。佐藤ちゃん、今日は早いんだね」
「日直だからねー。その分、明日はいつもより遅く行くわ」
「何そのプラマイゼロみたいな仕組み」

自分で突っ込んでおきながら、思わずクスクスと笑ってしまった。



電車での遭遇以来、私は佐藤ちゃんとよくつるむようになった。

休み時間とかも向こうから私の机にわざわざ来て、取り留めもない話をする。
佐藤ちゃんと話すときは、他の女子と話す時とは違って気楽にできるのだ。


それは多分、佐藤ちゃんが素直だから。
ここ最近一緒に話していてわかったことだ。


その部分に関しては、陽人に似ている。


あいつはズカズカと他人の懐に入り込む話し方をする。
最初は「なんなのコイツ」となるが、今となってはそのストレートな感じがいっそ清々しい。だからこっちも気負いなく言いたいことを言える。相手の顔色伺ったり、ノリ良くしたり、空気読んだり、そういうのは一切必要ない。


佐藤ちゃんと陽人の違いは、オブラートに包んだ言葉遣いかどうかってところかな。


まあそんなこんなで、教室にいて「つまらない」と思うことが少なくなった。今までなんとなく感じていた息苦しさも軽くなっている。