16の、ハネ。


バスというのは、学校までの有料の直通バスのことだ。この駅から学校まで距離があり、バスを要望する生徒が多かったためにちょうど五年前に出来たらしい。

私は常に金欠なので、約三十分歩いて学校まで向かうだが、わりとリッチな佐藤ちゃんはバスを使うようだ。


そして、佐藤ちゃんと別々で登校することの何が問題かというと。「陽人に見られでもしたら、嘘がバレる」ということ。まさに因果応報。嘘をついたバチが当たった。やはり嘘はつくべきじゃない。


陽人よ、どうかお願いだから一人歩く私に気づくな! そう心配しながら歩いていたが、前方で友達と並んで歩く陽人の姿を確認出来た。

楽しそうに喋りながら歩いているので、おそらく後方にいる私に気がつくことはないだろう。このままゆっくり歩けば大丈夫そうだ。



その様子を見て、ふと思う。



あいつは、いろんな人と仲が良い。
それなら、私なんかにかまう必要なんてないんじゃないだろうか。

だって、雪玉事件のことはもう一件落着してるわけだし。
毎週金曜のサークルだって、誘ってきたのは向こうだけど、勝手に私がフラッと訪ねてるだけだし。

何より、出会ってまだ間もない私なんかと話しているのは時間の無駄じゃないのか。私なんかより……。




あー、もうっ!
ナニコレ。嫉妬!? 私、陽人の周りの人に嫉妬してるの? 陽人が有名人だと知ってしまったから? そんなことで、私の気持ちは揺れ動くの?


ほんっとに!

ホントに、あいつと出会ってから調子狂う。


今まで、友達なんて、集団生活における最低限の人付き合い程度の認識でしかなかったから、一人のときに友達のことを思い出すことなんて皆無と言っても過言じゃなかった。


なのに、今は陽人のことを考えてる。



恋愛感情……ではない、と思う。ていうか、絶対にそう。もしそうだったとしても、失恋確定だし。


でも、最近友達と話すのが、なんとなく楽しく感じるのは、やっぱり。


君のおかげなんだろうな。