16の、ハネ。




練習が終わると、陽人は「途中まで送るよ」と言って一緒に帰ることになった。

「あのさ、陽人はどこら辺に住んでるの? ここまで歩きで来てるみたいだけど……」

私が尋ねると、陽人は「質問ゲーム再開だな!」と少し尖った八重歯を覗かせてハハハ、と笑った。

「ここからチャリで20分ほどのとこに住んでる。普段はチャリで来てんだけど、この前の雪のときに滑って転んでトラックにひかれて今は修理に出してる」
「ふーん」

と相槌を打ってから、「んっ!?」と陽人を二度見した。

「ちょ、今サラッと『トラックにひかれた』って言ってたけど、大丈夫なの!?」

「俺の愛用車は手術中だから、大丈夫とは言えない」

「いや、そうじゃなくて……」
と言ってから、ある考えが浮かんだ。

「もしかして、その足ってその事故で……?」

私が神妙な面持ちで聞くと、陽人は全く逆の面持ち、つまりは笑いながら「はい、ルール違反っ!」と答えた。

「あのさ、こういう質問は普通マジメに答えない?」

「答えない、てか俺は至ってマジメだけど?」

質問の答えをはぐらかされたので、私はむすっとした。

それに気づいたのか、陽人は苦笑しながら「困った奴だなぁ」と呟いた。