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「感想は?」
練習をひと段落終え、休憩時間に入ったとき陽人が観客席まで来て聞いてきた。
「いや、まさかパラバドミントンだとは思ってなかった。てか、全然気づかなかったわ」
私は素直に答えた。
そう。陽人の所属するサークルは、障がい者の人たちがバドミントンをするチームだったのだ。
この競技を、『パラバドミントン』と呼ぶらしい。
小さい子たちも元気よくシャトルを打っていて、とても楽しそうだった。
「だーって、お前、全然俺のこと興味ないもんな」
そう言って、陽人は唇を尖らせた。
彼は本当に怒っているわけではないけれど、なんとなく罪悪感が積もる。
「おーい、陽人、休憩終わりだぞー! 早く戻ってこーい!」
そこで片腕のおじさんに呼ばれて、陽人は「また怒られちゃう」と言いながら慌ててフロアに戻って行った。
去り際に「次はちゃんと俺のこと見てろよー」と、超俺様発言をかましてきたので、私は彼の背中に向けてアッカンベーをしてやった。
とは言いつつ、私は陽人を意識して観察する。
身長は私より頭一個分高いくらい。
私が160センチだから、170センチくらいだろうか?
髪の毛は黒く、俗に言う「スポーツ刈り」。
毛先の方は少し癖っ毛であるようだ。
顔は……ここからじゃ細かくは見えないけど、たしか目が二重だった気がする。
普段はちょっとつり上がっててくりっとした目だけど、笑うと細くなりタレ目になる。
それから、笑う時に八重歯が顔を出していた。
あ、そういえば右側の頬だけならえくぼが出来ていたなぁ。
……ここまで考えて私はふと気がついた。
あの人、笑ってる顔がめちゃくちゃインパクト強いんだ。
そして、今も得意技のスマッシュを打ちながら、彼は楽しそうに笑っていた。
