「君、名前なんていうの?」
私が素直に質問すると、「ハルト」と短く答えが返ってきた。その声は淡々としていた。
「え、漢字は? てか、普通フルネーム答えない?」
「はい、質問連続はルール違反! ……って言いたいところだけど、仕方ないから特別に答えてやろう」
俺様な態度に一瞬イラッとしたが、コイツには何を言っても意味がないということがこの数分でわかったので言葉を飲み込む。
「漢字は太陽の『陽』に『人』って書いて陽人だ」
その瞬間、私は暖かな日差しの中に飛び込んだような感覚になった。寒さもどこかへ飛んでいく。
ああ、なんだろう。
太陽の人。その意味と彼の人柄がマッチしていて、心にストンと落ちた。
爽やかな気持ちで、私はフッと笑う。
「なるほど、君に合ってる」
「だろ?」
そう言って陽人は満足そうに鼻を膨らませた。
