16の、ハネ。




冬の夜は容赦なく、私の体温を奪っていく。

むき出しの手はジンジンと痛み、もはや冷たいのか温かいのかさえ分からないほど、感覚が麻痺してきていた。

私は手を顔の前に持って行き、はあっ、と息を吐き出して温めた。白い息がすうっ、と夜の空気に吸い込まれて消えていく。

「寒いんだったら手袋貸してやってもいいぞ?」

上から目線でそんなことを言うもんだから、「誰かさんのせいで、寒い思いをしているんですけど」と皮肉交じりに言い返す。しかし当の本人は、「そいつサイテーだな」と真顔で返してきた。あ、ダメだ。コイツ、相当な天然だ。

まあ、これ以上寒さに耐えられなさそうだったので、私はお言葉に甘えて手袋を有り難く受け取った。
五本の指を通すと、小さな温もりが優しく手を包んだ。その正体は、ついさっきまでこの手袋を付けていた彼の体温だろう。


ふと顔を上げると、遠くの方で車が通っているのが見えた。

この道をまっすぐ行くと、大通りに繋がる。その大通りに出て仕舞えば、総体まではすぐだ。私も彼も歩くペースはそこそこ速いので、あと十分もすれば到着するはずだ。


私がまっすぐ前を見つめていると、「なあ」と隣から声がした。

「質問ゲームの続きやろうぜー。次お前の番」

ああ、すっかり忘れていた。だって、あんな突拍子もない質問(という名の要望)されたあとに普通でいろっていう方がおかしい。

「質問、か……」

どんな情報を仕入れようか。恥ずかしい思い出とか? いやいや、そう簡単に教えてくれないだろう。

色々と質問の内容を膨らませていたが、そこでふと気がついた。



私はこの人の名前すら知らない。