「じゃ、じゃあ! 逆恨みじゃないなら、何で私のフルネームとか知ってたわけ?」
相手が怒ってないとわかったので、タメ語に切り替える。
「え、別に知ってたっていいじゃん。友達は多いほうが楽しいだろ?」
「全然理由になってないし、それ友達って言わない。一方的なストーカーだよ……」
しかし、向こうは全く聞く耳を持たない。挙げ句の果てに、「んじゃ、今からダチになったってことで」なんて言い始めた。
「それじゃあ、もう話はこれで……」
「お前んち、この近くなの?」
プライバシーなんて全く気にしていない質問に私は思わず絶句する。そんなこと、ほぼ初対面の異性に言えるかっ!
私はもう一度無視を決めた。
しかし効果はなく、それどころか悪化した。
「あー、無視はいけないんだーっ! 」
コンビニ内でのフルネーム暴露よりも倍近く大きい声。
しかも、「いーけないんだ、いけないんだ! せーんせいに言っちゃおう」とご丁寧に歌まで付けて。
今度はコンビニの中まで聞こえていたらしい。五十代くらいの女性店員さんが微笑んでこちらを見ていた。その微笑みは、私たちを温かい目で見守ると語っている。待っておばさん、何か色々と勘違いしてるっ……!
「わかった! わかったから、とりあえず一回ストップ!!」
私はもう周りからの視線に耐え切れず、彼を止めさせた。
「ようやく返事してくれた! それで? お前の家って、ここら辺なのか?」
「……あのねぇ。そんなのプライベートなんだから、簡単に答えられるわけないじゃん。しかも性別考えて。あなたは男子、私は女子! これ、下手したらセクハラで訴えられるんだよ? 常識でしょっ!?」
一気にまくし立てたので、息が荒くなる。
しかし彼はそんな私を気にすることなく、「友達の家がどこか聞いちゃ悪いのかよ」と逆ギレした。
あー、もう! こいつの精神年齢は小学生並みだっ! 多分、何を言っても聞かないだろう。本当に面倒くさいヤツに捕まってしまった。
