すると……。
「あー、あれかぁ。あの後、顔が真っ赤になって、大変だったんだよなぁー」
うわお! これは絶対に怒っているではないかっ!
私はもう一度深々と頭を下げた。
「ほ、ほんとにごめんなさい! その代わりと言うのもなんですが、あなたの言うこと、なんでも聞きます!」
相手の顔を見るのが怖かった。どうしよう、逆恨みって何をされるんだろうか。反射的に体がこわばる。
しばらく沈黙が続いた。
相手がどう思っているのか気になって、恐る恐る顔を上げると、彼の肩が小さく震えていた。
やば、私、さらに怒らせたっ!!
しかし、私の頭上から漏れた声は。
「ぶはっ」
……へ?
「くくくく、ふ、ふ……あは、はははははっ!!」
彼は腰を曲げて、それはそれは愉快に笑っていた。
「あの、私、何か変なこと言いました?」
私が真剣に尋ねたのに、彼はまだ笑っている。その笑い声は、向かい側の道にまで届いたらしく通行人が何事かとこちらを見ていた。
「いや、改まって話始めたからさ……何かと思えばっ、くふっ」
彼は笑いをこらえながら話した。
「あんなこと、まだ、き……気にしてたのかよっ……はは、変な奴!」
え、もしかして全く気にしてなかった?
私の被害妄想が激しすぎて、早とちりしちゃっただけ?
そのことに気付いて、私は一気に顔の温度が熱くなった。
