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今日は金曜日。
やっと一週間が終わり、明日は何をしようかなぁ……なんて呑気に考えていたとき、お母さんにおつかいを頼まれた。買い忘れたものがいくつかあるらしい。まあ、特にやりたいこともなかったし、ちょうど良い暇つぶしだ。
私の住む家の近くにはスーパーマーケットがないので、買い忘れなどがあったときは近所のコンビニに行くしかない。
コンビニだとスーパーよりも割高になってしまうので、近所の方は皆、出来るだけ買い忘れをなくすようにしている。しかし、私のお母さんは、しょっちゅう買い忘れをしてしまうので、家の食費は少し割高だ。
そんなわけで、私は買い物リストのメモと財布をポシェットに入れ、“部屋着にコートを羽織り、サンダルを履く” という、ダサいにも程があるコーディネートでコンビニへ出かけた。
冬の日の入りは早い。
まだ午後の六時代だというのに、辺りはすっかり真っ暗だった。
神奈川県は首都圏にあるが、私が住んでいるのは神奈川県の中でも、横浜のような賑やかな都会とはかけ離れている田舎だ。
だからというわけじゃないけど、夜の街は静まり返っていた。サンダルのカスッカスッという音ですら、鳴らすことを躊躇われる程静かだ。でも、その静けさが返ってどことなく安心感を生み出していた。
道路の脇には、雪かきで溜まった白い山が連なっている。見たところ、道路には私一人しかいないようだった。気分は、赤い絨毯の上を歩くよう! その気分に合わせ、私は背筋を伸ばしながら堂々と道路のど真ん中を歩く。
この時点ではまだ、私は平穏な日常を送っていた。
