わたしは中村百合華(24)
鉄道会社で車掌をしている。
今日は14時27分出勤。
乗り組みの運転士さんとホットコーヒーを飲む。いつものルーティーン。
運転士さんの孫の自慢を話半分で聞きながら気になったことを聞いてみた。
「何歳の時にお子さん産まれたんですか?」
「21。昔は大卒も少なくて俺は、18で就職してるからなぁ。普通やで」
「そうなんですか…」
「お前は運転士目指してるんやろ?」
「そうなんですよねぇ〜」
「子供育てながら運転士目指すのは厳しいんちゃうか?」
「そうですね。ゆっくり考えます」
相手も居ないので。と、話が変な方向に向かうのは勘弁なので、余計なことは言わなかった。
チラッと時計を見る。
そろそろ"王子"の出勤時間だ…
ほらきたっ
おっさん連中の間に王子をみつけた。わたしにはまるで雑草の中に薔薇が1本咲いているように見える。
「コーヒーご馳走さまでした。本日はよろしくおねがいします。」
乗り組みの運転士さんに軽く挨拶し、すぐに王子の元へ走る。