「……またまたあっさり思い出しました」
たぶん顔まっかっかだな、今。
「なんだかんだで沙羅は鬼だよね。いや、案外小悪魔だね」
「なんで、どーして?」
「両想いの男女がほとんど一緒に暮らしてるんだよ?佐野君すごく、耐えてると思うなぁ」
「いやいや、悠君はあの日以来お泊まりしてないし、両想いなんてあり得ないもん!」
ほんとの愛情表現って、もっとひそやかなものだと思ってたし、あんなあけすけだと、嬉しいっていうよりも、戸惑ってしまうほうが強くって。
「確かにフィアンセとか1年の美少女とか、そのまんまにしてるのはひっかかるけどさぁ」
「でしょ、でしょ?京ちゃんだって私の立場なら揺れるし戸惑うよね?」
「うーん、そう言われるとそだねー」
そりゃあ、京ちゃんの眉間にも深いシワが寄って当然。
「もしかして沙羅のことは家族愛に近いのかな?」
「……それはそれでだいぶ傷つくけど、それがいちばん近いような気がしてる」



