わたしのキャラメル王子様


「悠君、ニューヨークに行っちゃったんです」


「あらそうなの?今度四つ編みを教えてあげるって約束してたのに」


師長さんは悠君がニューヨークに行ってしまったことを話すとひどくがっかりしていた。


悠君はナースステーションの看護師さん達にもモテモテだったらしい。ほとんど寝てただけなのに。



みんな悠君の病室に用もなく出入りするもんだから見兼ねた師長さんがとがめたら「私だってイケメン見たい」「担当したい」と皆さん直訴してきたんだとか。



「起きた顔を見るまでは帰れない」となかなか帰ろうとしない夜勤明けの看護師さんもいたらしい。どんだけモテたら気がすむんだ彼は。



「寝てても美形、起きたら起きたであの人懐っこいキャラクターでしょ。隣の病棟の子供達ともすぐ仲良くなってね、引っ張り回されて病室になんかいなかったのよ。すごく素敵な子ね」



師長さんに褒められて悠君の笑顔に会いたくなってしまった。ちょっとだけ、切ない。


「もぉ、すぐ泣かないの!まだ始まったばっかだよ?」


「泣いてないもん!泣かないもん!」


京ちゃんには涙目がバレた。


それにしても悠君ってやっぱ人気者なんだな。どうかあっちの人たちにはモテないでください!神様よろしくお願いします! って、もう願うしかなさそう。



「あっ、大沢君きたきた。頑張って~!お客様二人が待ってるわよぉ、ここがとりあえずのゴールよぉ~」



向こうの廊下から松葉杖をついた大沢さんがゆっくりやってくるのを見つけて師長さんがエールを送った。



「あっれぇ、大沢さんて、もしかして駅前のプティカの!」



「あっ、京ちゃんじゃん!なんで?」



大沢さんと京ちゃんはまさかの顔見知りだった!